Column

コラム

【2026年版】ウェブアクセシビリティは義務?企業がホームページでやること|合理的配慮と改正JISの基礎知識

スマートフォンを操作して笑顔を見せる中高年の女性

「ウェブアクセシビリティが義務化されたと聞いたけれど、うちのホームページは大丈夫なのか」「何から手をつければいいのか分からない」

2024年4月1日、改正障害者差別解消法が施行され、民間の事業者にも、障害のある人への「合理的配慮」の提供が、法的な義務になりました。この改正をきっかけに、「ホームページも、対応が義務になった」という説明を目にする機会が増えています。

ただ、「何が義務で、何が努力義務なのか」は、解説によって書き方がばらばらで、分かりにくいのが実情です。さらに、日本のウェブアクセシビリティの規格であるJIS X 8341-3は、現在、改正の作業が進んでおり、2026年10月から2027年3月ごろに発行される見込みとされています。

この記事では、法律上の位置づけ、規格の基礎知識と改正の見通し、広島の企業がホームページで先に取り組みたいことを、専門知識がなくても判断できるように整理しました。

※本記事は2026年10月24日時点の情報にもとづいています。法律や規格の内容は、今後変わる可能性があります。法的な判断が必要な場合は、専門家や、公的機関の案内でご確認ください。

【まず結論】広島の企業が押さえたい3つのこと

詳しい説明の前に、結論を先にお伝えします。

  • 義務になったのは、「障害のある人への合理的配慮の提供」。ホームページのアクセシビリティ対応そのものは、法律上は「環境の整備」として、努力義務に位置づけられている
  • ホームページの対応は、努力義務とはいえ、整備しておくことが、いざというときの合理的配慮にもつながる
  • すべてを一度に直す必要はなく、画像の代替テキスト、色のコントラスト、キーボード操作など、影響の大きい項目から、順番に取り組める

「義務化されたから、慌てて全ページを直す」のではなく、現状を把握して、優先順位をつけて、少しずつ直していくことが、現実的で、確実な進め方です。

「義務化」の正しい理解|何が義務で、何が努力義務なのか

まず、法律上の位置づけを整理します。ここを混同すると、必要以上に不安になったり、逆に、何もしなくていいと誤解したりします。

1. 義務になったこと:合理的配慮の提供

2024年4月1日の改正で、民間の事業者による、合理的配慮の提供が、法的な義務になりました。それまでは、努力義務でした。広島市の案内によると、合理的配慮とは、障害のある人から、社会的な障壁を取り除いてほしいという意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で行う、必要で合理的な取り組みを指します。

たとえば、ホームページで予約を受け付けている店舗に、「フォームが使いにくいので、電話で予約したい」という申し出があった場合に、電話で対応するのも、合理的配慮の一つです。

2. 努力義務のまま:ホームページなどの「環境の整備」

一方、ウェブアクセシビリティの確保は、障害者差別解消法のなかで、事前に環境を整えておく「環境の整備」として位置づけられています。解説記事によると、これは、2016年4月の法律の施行以来、努力義務とされており、今回の改正でも、変わっていません。

つまり、「ホームページの対応そのものが、義務化された」という説明は、正確ではありません。ただし、環境の整備を進めておくことは、申し出があったときの、合理的配慮を行いやすくすることにもつながります。

3. 「JISに準拠することが義務」でもない

ウェブアクセシビリティの規格であるJIS X 8341-3に、準拠することが、法律で義務づけられているわけではありません。企業のコラムのなかには、「JISへの準拠が義務化」と書いているものもありますが、法律上は、環境の整備の努力義務、という位置づけです。

なお、法的な解釈や、個別の事案への当てはめは、状況によって変わります。判断に迷う場合は、専門家に相談しましょう。

ノートパソコンのキーボードを操作する手元

規格の基礎知識|WCAG・JIS X 8341-3と、改正の見通し

ウェブアクセシビリティに取り組むときは、「どの基準を目標にするか」を決める必要があります。ここで出てくるのが、WCAGとJISです。

WCAGとJIS X 8341-3の関係

  • WCAG:W3Cが定める、ウェブコンテンツのアクセシビリティの国際的なガイドライン
  • WCAG 2.0は、ISO/IEC 40500:2012となり、JIS X 8341-3:2016は、これと同じ内容です。達成基準は61項目で、適合レベルは、A、AA、AAAの3段階です
  • WCAG 2.1が2018年、WCAG 2.2が2023年に公開され、達成基準が追加されました
  • 2025年9月には、WCAG 2.2と同等の内容で、ISO/IEC 40500:2025が発行されました

JIS X 8341-3は、改正の途中

国内の動きとしては、2025年10月に、JIS X 8341-3の改正原案を作成する委員会が発足しました。ISO/IEC 40500:2025との一致規格として、WCAG 2.1と2.2で加わった達成基準を、JISに取り込む方針と紹介されています。

セミナー資料によると、発行の時期は、早ければ2026年10月、遅くとも2027年3月の見込みです。改正後の達成基準は、全部で86項目になる見込みで、現在の61項目から増えます。発行された後は、試験にかかる手間や費用も、増える可能性があります。

ここで大切なのは、現在、公的機関などが基準にしているのは、JIS X 8341-3:2016だという点です。たとえば、内閣府の経済社会総合研究所は、2026年9月2日に、JIS X 8341-3:2016にもとづく試験の結果を公表し、適合レベルAAに「一部準拠」していると宣言しています。

これから新しくホームページを作る場合や、大きく改修する場合は、改正の方向性を見据えて、WCAG 2.2も意識しておくと、後から手戻りが少なくなります。

まず直したい、6つのポイント

解説記事で、優先的に取り組む項目として挙げられているのは、次のようなものです。専門のツールがなくても、確認しやすい項目から並べました。

1. 画像に、代替テキスト(alt)をつける

目の見えない人が使うスクリーンリーダー(画面の読み上げソフト)は、画像の内容を、代替テキストから読み取ります。内容を伝える画像には、その内容が分かる短い説明をつけます。飾りだけの画像には、読み上げの必要がないことを示す、空の代替テキストを設定します。

2. 文字と背景の色のコントラストを確保する

薄いグレーの文字を、白い背景に置くなど、読みにくい配色は、視力の弱い人だけでなく、屋外でスマートフォンを見る人にも、不便です。WCAGでは、通常の大きさの文字で、背景との明るさの比を4.5対1以上にすることが、AAの基準になっています。

3. 見出しを、正しくマークアップする

文字を大きくして、太字にしただけの「見た目だけの見出し」では、読み上げソフトの利用者は、ページの構造をつかめません。h2、h3など、見出しのタグを、順番に使いましょう。この点は、検索エンジンにとっても、読み取りやすい構造になります。

4. キーボードだけで操作でき、今どこにいるかが分かる

マウスを使えない人は、Tabキーなどで、リンクやボタンを移動します。メニューやフォームが、キーボードだけで操作できるか、いま選んでいる場所が、枠線などで分かるかを確認します。デザインのために、フォーカスの枠線を消していないかも、確認したい点です。

5. 動画に字幕をつける

音声が聞こえない人や、音を出せない場所で見る人のために、動画には、字幕をつけます。

6. 自動で切り替わる表示は、止められるようにする

トップページのスライダーなど、自動で動く表示は、読むのに時間がかかる人にとって、負担になります。一時停止や、停止の操作を用意しましょう。

なお、文字の拡大などの機能は、多くのOSやブラウザに、すでに備わっているため、サイトごとに、個別に用意する必要性は低いとされています。

ボタンやリンクの「大きさ」と、フォームの作り方

スマートフォンでの操作が中心になった今は、押しやすさも、大切な視点です。WCAG 2.2では、ボタンやリンクなどの、押す部分の大きさを、最低でも24×24 CSSピクセル以上にすることが、AAの基準に加わりました。小さな文字だけのリンクが、並んでいるようなデザインは、見直しの対象になります。

お問い合わせフォームや予約フォームでは、入力欄ごとに、「何を入力するのか」を示すラベルを、正しく関連づけておくことが基本です。ラベルが、入力欄の中の薄い文字(プレースホルダー)だけだと、入力を始めると消えてしまい、分からなくなります。

「アクセシビリティ対応」を、うたう前に知っておきたいこと

オーバーレイ(後付けのボタン)だけでは、対応したことにならない

ページの隅に、文字サイズの変更や、色の反転のボタンを後付けするサービスがあります。しかし、セミナー資料などでは、こうした機能を付けただけでは、アクセシビリティ対応とは見なされない、と指摘されています。ホームページの作り自体を、見直すことが基本です。

「完全に準拠」を、最初から目指さなくていい

先ほどの内閣府の例のように、公的機関でも、「一部準拠」を宣言したうえで、対応の状況を公開しています。大切なのは、どこまで対応できていて、何が未対応なのかを、把握して、公開することです。完全でなければ宣言できない、ということではありません。

広島市や広島県も、ウェブアクセシビリティの方針や、JIS X 8341-3:2016にもとづく試験の結果を、公開しています。自社の目標を考えるときの、参考になります。

広島の企業が進める、5つのステップ

ステップ1:現状を確認する

主要なページ(トップページ、サービス紹介、お問い合わせフォームなど)を、数ページ選び、先ほどの6つのポイントが満たされているかを、確認します。無料のチェックツールも、補助として使えます。ただし、ツールで確認できる範囲は、一部に限られ、人の目での確認が必要な項目が、多く残ります。

ステップ2:目標を決める

最初から、すべてのレベルを目指すのではなく、「主要なページで、レベルAAを目指す」など、現実的な目標を決めます。

ステップ3:影響の大きい項目から直す

お問い合わせや予約など、お客様が行動するページから、優先して直します。

ステップ4:新しく作るページで、守る

すでにあるページを直すと同時に、新しく作るページでは、最初から、守るルールを決めておきます。後から直すより、一般に、手間が少なくて済みます。

ステップ5:方針をまとめて、公開する

「どこまで対応しているか」「問い合わせ先はどこか」を、サイトに載せておきます。申し出があったときに、すぐ対応できる窓口を決めておくことも、合理的配慮の準備になります。

これからのホームページに、アクセシビリティが大切な理由

ウェブアクセシビリティの対応は、障害のある人のためだけのものではありません。高齢の方、けがをしている方、スマートフォンで外出先から見る方など、多くの人の使いやすさに、つながります。

さらに、最近は、AIのエージェント(人に代わって、ウェブサイトを操作するAI)が、ページの内容を読み取って、操作する動きも出てきています。Googleのweb.devでは、こうしたエージェントが、ページの構造や、アクセシビリティツリー(ブラウザが作る、操作できる部品の一覧)を手がかりにすることを説明しており、きちんと作られたHTMLは、人にとっても、AIにとっても、使いやすいサイトになると整理されています。

ただし、アクセシビリティ対応が、検索順位を直接上げるものとして、Googleが示しているわけではありません。順位のための施策としてではなく、「すべての人が使える」ホームページを作る基本として、取り組むことをおすすめします。

よくある3つの誤解

① 「義務化されたから、対応していないと罰せられる」

ホームページのアクセシビリティ対応は、法律上は、環境の整備として、努力義務に位置づけられています。ただし、合理的配慮の提供は、義務です。「ホームページを直したかどうか」ではなく、「申し出があったときに、きちんと対応できるか」が、大切です。

② 「JISに準拠していないと、公開してはいけない」

JISへの準拠を、公開の条件とする法律はありません。まずは、できるところから、取り組みましょう。

③ 「ツールを入れれば、自動で対応できる」

自動のチェックツールで確認できるのは、一部です。また、後付けのボタンだけでは、対応したことにはなりません。人の目での確認と、ホームページの作りの見直しが必要です。

パソコンの前でデザインを確認するグラフィックデザイナーの女性

広島の企業がやりがちな3つの失敗パターン

① 「義務化」の言葉だけで、慌てて全ページを作り直してしまう

現状を確認しないまま、全面的に作り直すと、費用も期間もかさみます。まずは、主要なページの現状を把握して、優先順位をつけましょう。

② デザインを優先して、色や文字の読みやすさを犠牲にする

おしゃれに見せようとして、薄い文字色や、小さな文字を選ぶと、読みにくいホームページになります。デザインの段階から、読みやすさを基準に入れておくことが大切です。

③ 公開した後、何もしない

ホームページは、更新するたびに、画像や文章が追加されます。公開時には整えていても、更新のたびに、代替テキストのない画像が増えていくことがあります。運用のルールまで、決めておきましょう。

ウェブアクセシビリティに関する、よくある質問

Q. 小さな会社でも、対応が必要ですか?

合理的配慮の提供は、事業者の規模に関わらず、求められています。ホームページの環境の整備は、努力義務ですが、できる範囲から、取り組んでおくと安心です。

Q. 費用は、どのくらいかかりますか?

ホームページの規模や、現状の状態、どのレベルを目指すかによって、大きく変わります。まず、現状を確認して、見積もりを取るのが確実です。

Q. 海外向けの販売も行っていますが、注意することはありますか?

EUでは、2025年6月28日から、欧州アクセシビリティ法が適用されています。EU域内のお客様に向けた、商品やサービスの提供がある場合は、対象になるかどうかを、個別に確認する必要があります。

Q. 試験は、自社でもできますか?

JIS X 8341-3の試験は、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)が公開している試験の手順にもとづいて、社内の担当者が行うことも可能と紹介されています。ただし、専門的な判断が必要な項目も多いため、必要に応じて、専門の会社に依頼しましょう。

《今回の対応で押さえたい基本ルール》

  • 情報は、内閣府、広島市などの公的機関や、W3C、JISなどの一次情報で確認する
  • 「義務」と「努力義務」を、分けて理解する
  • 完璧を目指さず、影響の大きい項目から、順番に直す
  • 後付けのボタンやツールだけで、対応したことにしない
  • 新しく作るページでは、最初から守るルールを決める
  • 申し出があったときに、すぐ対応できる窓口を決めておく

まとめ|広島の企業が、優先順位をつけて進めるために

ウェブアクセシビリティは、「義務だから、仕方なく対応する」ものではなく、お客様にとって、使いやすいホームページを作るための、基本の考え方です。ただし、すべてを一度に直す必要はありません。優先順位をつけて、順番に進めましょう。

JIS X 8341-3は、現在、改正の作業が進んでいます。発行の時期が近づくと、対応の基準が、変わっていきます。今のうちから、現状を把握して、できるところから整えておくことが、後の負担を軽くします。

今日やること

  • トップページとお問い合わせフォームを、キーボードのTabキーだけで、操作できるか試してみる
  • 画像に、代替テキストが入っているかを確認する
  • 文字と背景の色が、読みやすいかを、スマートフォンでも確認する

今週中にやること

  • 主要なページの現状を、6つのポイントで確認して、一覧にまとめる
  • お問い合わせフォームの、ラベルや入力のしやすさを確認する
  • 申し出があったときの、相談窓口と、対応の流れを決める

今月中にやること

  • 目指すレベル(まずは主要なページでAAなど)と、対応のスケジュールを決める
  • 改正されるJISの発行に備えて、WCAG 2.2も意識した改修計画を立てる
  • 新しく作るページの、守るルールを、制作会社と共有する

相談先を選ぶときに確認したい3つのポイント

自社だけでの対応が難しい場合は、外部の専門会社に相談する方法もあります。依頼する前に、次の3点を確認しておくと安心です。

  • どの基準(WCAG 2.2、JIS X 8341-3:2016など)と、どのレベルを目標にするのかを、説明してもらえるか
  • 対象にするページの範囲と、確認の方法(ツールと、人の目での確認)が、明確か
  • 確認した結果を、一覧にして報告してもらえるか

あわせて、作業の内容と費用、対応にかかる期間も、事前に確認しておきましょう。「何を、どこまで行うのか」が分かる形で、依頼することが大切です。

ホームページのアクセシビリティでお困りの広島の企業様へ

マザーハンズ株式会社は、広島で、ホームページの制作やWordPressの運用・保守、集客のご支援をしています。ご相談は、即日対応でお受けしています。

「自社のホームページが、どの程度対応できているか知りたい」「何から直せばいいか分からない」「新しく作るサイトで、最初から配慮しておきたい」といった場合は、まずはご相談ください。

サイトの現状の確認から、優先して取り組むべき項目まで、貴社の状況に合わせてご案内します。


関連記事

Related

Contact

マーケティング全般、Webコンサルティングであなたの力になります。
プロモーションや営業活動における課題がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。